儚く美しい彼に、幸せの花雨を。

少し大きめの水槽を見ていた彼の元に寄ると、他の水槽と比べ物にならないほど、数多い海月が泳いでいた。
「海月って、すごい好きなんだよね」
彼は続けて、海月はねと教えてくれた。
「海月は、脳も、血管も、心臓もないんだって。感情すらないんだ。しかも、死んじゃう時は、水に溶けてなくなるんだって。凄い不思議な生き物だよね。心臓ないのにどうやって動いてるんだろ。僕は、生まれ変わったら海月になりたいなぁ」
彼は水槽を見ていない。何か、すごい遠くの物を見ている。それが、私とは絶対に違う価値観を表しているようで、悲しかった。
「でも、楽しさとか嬉しさとか、悲しさとか寂しさとかは、人間だから感じることが出来るんだよ?愁は、私と一緒にいて感じた感情が嫌だったの…?」
言い合いをしたいわけじゃない。
それでも、彼には生きたいと思う事を諦めないで欲しかった。
海月になったら、なんにも感じることが出来ないのならば、愁は私と、何も感じたくないって言うの?私との時間は無駄だったの…?