儚く美しい彼に、幸せの花雨を。

その中で水族館はたくさん行った。
お母さんがよく言っていた。
水の中で泣いてる人の涙に気付ける人になりなさいって。
その時の私はまだ幼くて、意味が分からなかった。どういうこと?って聞き返した。
そしたらお母さんは、水の中って涙に気付かないでしょ?それも分かっちゃう程優しい人間に夏海にはなって欲しいと言ってくれた。
気付くにはとても大変だけどあなたなら大丈夫。心からその人に向き合えば、必ずその人の想いに気付けるはずだよと言葉を続けた。
私は、お母さんの望むような優しい子にはなれない。なれないけれど、愁と出会って努力しようって気持ちにはなれたんだ。まずは気持ちからが大事なんだよね、お母さん。
その時、少し強い風が吹き、私のスカートを揺らした。それと同時に、お母さんがそうだよと言ってくれているような気がして、瞳がツンと痛んだ。
「夏海?中入ろうよ」
彼はもう、入口のそばにいて、自分が長く考え事をしていたんだと現実に戻された。