儚く美しい彼に、幸せの花雨を。

恐る恐る、後ろを振り向く。
「しゅ…しゅ、う?」
口の震えが止まらなかった。口も手も足も、体全部が震えているのではという感覚に襲われた。
初めて本当の恐怖を知ったような気持ちになった。
病院に誘いに行った時から、少し違和感はあった。
いつもより笑顔の少ない彼の表情。
誘った後から気が付いた、いつもより青白い彼の顔。
少し動いただけで、こっちまで聞こえてくる荒い息遣い。
違和感に気付いていたにも関わらず、一緒に過ごしたいという自分の欲望に勝てなかった。
どうしよう、救急車…だよね。
手の震えが止まらなくて、上手くボタンが押せない。周りの人たちの声が全然聞こえない。世界に私だけしかいないような静寂だった。
早く、早くしなきゃ愁が…。
その時、静寂の世界に音が響いた。
「一ノ瀬!何してんだよっ!」
「ひ…ひいら、ぎくん…どうしよう、私…」
「お前は一旦落ち着け!後は俺に任せろ!」
彼は震えた私の手からスマホを奪い、冷静に色々な人に指示を出していた。