儚く美しい彼に、幸せの花雨を。

「夏海、朝のニュース見た?」
突然、彼はそう言った。
朝のニュース、メイクしてたからじっくりとは見ていなかった。雪が降る可能性があるとは言っていたけれど。
「じっくりとは見てないよ」
「じゃあ。空、見てごらん?」
彼はそう言いながら、無邪気な笑顔で私の方に振り返った。
彼の言われるがまま、私は窓に近づき、空を見上げた。
「うわぁ!凄く、綺麗…」
私はあまりの綺麗さに感銘を受け、開いた口が塞がらなかった。
「流星群…初めて見たぁ」
本当に、美しい。キャンバス1面に海底のような青を塗り、幸せの白線を流しているようだ。
「夏海、願い事してもいい?」
「うん!いいよ」
窓からは、冬の涼しく、冷たい風が吹き込み、流星群のような彼の美しい髪を揺らした。
両手を胸の前で絡め合い、瞳を閉じている彼。この彼の世界だけで、美術館に飾られている絵画のよう。
最近、彼はよく『僕がいなくなったら』の話をするようになった。余命がどんどん近付いてきての焦りからかもしれないけれど、彼の性格からして1番の理由は多分、私に現実と向き合って欲しいという願いからだと思う。
彼は胸の前から絡めている手を解き、瞳を開けた。彼の表情は、この病室にどこか寂しさを漂わせた。
「愁、写真!空の写真撮ろうよ!」
そんな寂しさの世界に耐えられなくなり、話題を変えた。
私は名案だというばかりに、声を高ぶらせてそう言った。彼も、名案だねというような表情をし、カメラを空へ向ける。
私たちの間に、パシャ!という音が響き渡った。この夜空は、まるで彼のよう。
美しい彼の瞳と夜空は、瓜二つというくらい同じ色だった。そして彼の髪は一瞬で消えてしまいそうな透明感がある。流星群のように、儚く、美しい。ずっと見ていないと消えてしまうのではないかというほど、不安になる。