儚く美しい彼に、幸せの花雨を。

「分かった、愁を誘拐犯にさせる訳にはいかないからね」
私もノリに乗って、ふざけ合った。
病院に向かいながら、スマホでお母さんに電話をかけた。
電話で話すのは初めてだから少し緊張するな…。
私と愁の間には、電話音と、トラックの音、工事現場の激しい音が響き渡っている。
プルルルルル、プルルルルル…。
『はい、もしもし夏海?どうかしたの?』
『あ、お母さん、今日はちょっと友達の家に泊まってもいい?』
『はぁ…そういう事はもっと早く言いなさい?』
『ご、ごめんなさい』
『まぁ良いわよ、でも、友達のご両親に迷惑かけちゃ駄目よ?ちゃんと挨拶してね?手洗いうがいも忘れずにね?』
『そ、そんなの分かってるよ!小学生じゃあるまいし』
『冗談よ冗談、んふふ、楽しんで来てね?くれぐれも事故…帰り道には気をつけてね』
『うん…ありがと、おやすみなさい』
『おやすみ』
電話を切り、愁の方へ視線を向けると、彼はクスクスと、笑い声を耐えていた。