儚く美しい彼に、幸せの花雨を。

あの時一緒に過ごしていたのが愁だと知っても、記憶を思い出すことができない。
でも、彼は急かさず待っていてくれる。
それだけで、嬉しくなる。彼の些細な優しさが、全部嬉しい。
「愁は、私にたくさんの『嬉しい』をくれるよね」
「『嬉しい』?」
「うん、喜びだったり、優しさだったり、幸せだったり」
「僕が夏海に?」
「そうだよ、あなたには相手に『嬉しい』を届ける事が出来る人なんだよ。それは、みんながみんな出来ることじゃないよ」
「僕が相手に『嬉しい』を届ける事が出来る、か…。初めて言われた」
彼は瞳を柔らかくゆるめて、穏やかに言う。
「あ、そういえばね」
「うん?」
そう言うと彼は、バッグの中からアルバムを取り出した。
「これね、この丘に来る時、たまに持ってきてたカメラで撮った写真なんだけど、夏海に見て欲しいんだ」
「え、いいの?!」
彼は、夏海のために撮っていたんだと言ってくれた。また優しさをくれた彼に『好き』が増えていく毎日。