儚く美しい彼に、幸せの花雨を。

私は笑顔を作ることしか出来なかった。愁には、幸せのままで生きて欲しいから…残り少ない命だとしても、生きてる人には、幸せになる権利がある。
「うん…うんっ…ありがと、夏海。僕、夏海と出会えて本当に良かったよ…」
「…ありがとっ、私も、愁と出会えて本当に良かった」
最近の私達は、泣いてばかりだ。2人で泣いて、笑って。でも、これはこれで幸せだ。幸せだって思う基準なんてない、当たり前の事だけど、忘れてしまう事。彼が、気付かせてくれた。
気が付けば夕日があと少しで、私達の世界から消える瞬間だった。
夕日の光が、水平線上に輝いた。煌めいて、消えていったその光は、夜の帳を下ろす瞬間だった。
彼の孤独を知らされる夜。病室、シンとした空間に1人取り残されたような感覚。
でも、絶対朝は来る。苦しさも、寂しさも、朝が来れば大丈夫だよ。私が、会いに行くから。どこに行っても、何をしてても、私は絶対会いに行くから。
少し肌寒さを感じ、二の腕を擦る。
「寒いの?」
彼はこのようなひとつの動作も見落とさず、優しさをくれる。
「ちょっとだけね、でも大丈夫だよ」
私が、素直に甘えられたら、素直に言えたら、まだ私の知らない愁を見られたのかな。でも、甘え方なんて、忘れてしまったのだ…。3年前から今までは何もかも諦め、なんにも興味を持たず、空気のように生きてきたのだから。