日差しの強い夏のある日。いつものように凛花と公園で遊んでいると、母さんがアイスバーを買ってきてくれたことがあった。
当時の俺はバニラ、凛花はラムネのアイスが好きで、いつも決まって同じものをねだった。普段は家で食べるのに、珍しく外で食べることを「贅沢だ!」とはしゃいだ凛花は、嬉しさのあまり袋から出したラムネアイスを持って公園を走り回る。
危ないから止めるよう促したその直後、凛花は石につまずいて転んでしまった。
大好きなラムネアイスは棒の部分こそ離さなかったものの、アイス自体が地面についてしまい、砂まみれになってしまった。食料でも探しにきたのか、近くを通った蟻がアイスを見つけ、凛花が起き上がる前にアイスにかぶりつく。
凛花は号泣した。
せっかく買ってもらった、大好きなラムネのアイス。
外で食べることを楽しみにしていたのに砂まみれにしただけでなく、蟻の養分になりつつある。今から蟻を振り落とし水で砂を洗い流しても、食べる気にはなれるわけがない。
周りには同い年くらいの少女たちがこちらを見てクスクス笑っていた。それを見て凛花は更にわんわんと泣いた。いくら目元を擦っても涙は止まらない。転んだ時にできた膝の擦り傷からは血が流れている。母さんが駆け寄って声をかけても、凛花には聞こえない。
――その時の俺は、きっと焦っていたんだ。
泣いている彼女を見たくなくて、笑っていてほしくて。その一心でぺちっと、凛花の額を不器用に指で弾いた。
当時の俺はバニラ、凛花はラムネのアイスが好きで、いつも決まって同じものをねだった。普段は家で食べるのに、珍しく外で食べることを「贅沢だ!」とはしゃいだ凛花は、嬉しさのあまり袋から出したラムネアイスを持って公園を走り回る。
危ないから止めるよう促したその直後、凛花は石につまずいて転んでしまった。
大好きなラムネアイスは棒の部分こそ離さなかったものの、アイス自体が地面についてしまい、砂まみれになってしまった。食料でも探しにきたのか、近くを通った蟻がアイスを見つけ、凛花が起き上がる前にアイスにかぶりつく。
凛花は号泣した。
せっかく買ってもらった、大好きなラムネのアイス。
外で食べることを楽しみにしていたのに砂まみれにしただけでなく、蟻の養分になりつつある。今から蟻を振り落とし水で砂を洗い流しても、食べる気にはなれるわけがない。
周りには同い年くらいの少女たちがこちらを見てクスクス笑っていた。それを見て凛花は更にわんわんと泣いた。いくら目元を擦っても涙は止まらない。転んだ時にできた膝の擦り傷からは血が流れている。母さんが駆け寄って声をかけても、凛花には聞こえない。
――その時の俺は、きっと焦っていたんだ。
泣いている彼女を見たくなくて、笑っていてほしくて。その一心でぺちっと、凛花の額を不器用に指で弾いた。