「はじめまして! わたし、りんかってゆうの!」

 今の家に引っ越してきたのは、俺が保育園に上がる少し前のことだった。
 挨拶周りで古賀家を訪れ、親の立ち話に飽きてきた時、家の塀からひょいと顔を覗かせた少女はそう言った。その時の俺は恥ずかしがり屋で、唐突に声をかけられてもすぐに答えられず、母親の影に隠れた。

 放っておいてくれたらよかったのに、不思議そうに見ていた少女は塀から出てきて俺にくっついてくる。いつの間にか追いかけっこが始まり、帰る頃には名前を呼び合うほど仲良くなっていた。

 新しい家に帰った後で、近所には同い年の子供がいないことを父さんに教えられた。俺にとって少女――凛花は、引っ越して初めての友達になったのだ。

 それからは一緒にいることが多くなり、同じ保育園に通うことを凛花が知ると「いっぱい遊べるね!」と笑いあった。凛花が笑うとなぜか自分も嬉しくて、気付かぬうちに頬が緩んでいたらしい。