実際に自分はちゃんと伝えられただろうか。
 思い返してみても、ただの意地のぶつかり合いをしただけのような気がしてならない。凛花が眠る直前で言いかけた言葉も、嘘っぽく聞こえてしまったかもしれない。

「そういえば、凛花ちゃん、途中で寝ちゃったんだよね。疲れてたのかな」
「ゴンドラが良いゆりかごにでもなったんだろ。……でもまぁ、牧野のおかげで話せたところはある。ありがとう」
「いいえ。あとはさっちゃんだね」
「……話す以前の問題だな」

 園内にいる間、青山はずっと凛花の隣をキープし続けていた。さらに目が合うと逸らされるか、睨まれ、話しかける隙はどこにもなかった。隙の無さに感服するも、それでは意味がない。

 それにもしかしたら、仲介人の言っていた「凛花の悩み」を唯一聞いた人物は青山さつきである可能性がある。悩みを自分から相談するような凛花が高校生になっても健在していれば、相談されるまで無理に聞いてこない牧野よりも、自分から気になって問いただし、はっきりと答える青山の方が適任だろう。

 しかし、この話しかけにくい現状には幾度となく周りの冷たい目を当てられてきた俺でも挫折しそうになる。割り切れることはできたとしても、他人に罵倒されて平気な人間がいるわけがないのだから。

 青山とは仲の良い牧野でも難しいのか、唸りながら一緒に方法を考えてくれるけど、一向に良い案は出てこない。