「私、寝てたよね……ごめんね」
「ちなみにどこまで覚えてる?」
「えっと……私も自分勝手だよって言ったのは覚えてるんだけど……ごめん、そのあたりからわからない」
どうして寝ちゃったんだろう、と首を傾げる凛花。
仲介人の言った通り、言いかけた言葉はなかったことになっている。眠っている間に頂上を越え、あと少しで降りるのだとわかると、凛花は大きく肩を落した。
「ショック……せっかく頂上まで行ったら、一緒に写真撮ろうと思ってたのに……」
「写真なら牧野が撮ってただろ?」
「でもツーショットは撮ってない! おばさんにお願いされてるから、撮らなきゃって思ってて」
「……それってツーショットじゃないとダメなの?」
「ダメじゃないと思うけど、私も欲しいし」
「……ったく、そっち詰めて」
ポケットからスマートフォンを取り出すと、凛花の隣に座った。カメラモードを起動して画角に二人と背後の景色が見えるように入れる。さすがに牧野みたいに撮り慣れていないけど、これで我慢してもらおう。
「えっあ、あの、溝口くん!?」
「要らないならいいけど」
「い、いる! あ、ジェットコースター来るよ! 入れられるかな?」
「そんな良いタイミングで入るか……って、来た!?」
慌ててシャッターを切れば、運よく入り込んだジェットコースターとともに、どこか幼さが残る笑顔が写っていた。凛花のスマートフォンに送ると、表示された写真を見て嬉しそうに目を細めた。