嗚咽交じりに本心を告げると、凛花から目を逸らした。今まで溜めてきたものを吐き出すのが弱い者がすることだと思うと悔しくて、何よりそれを凛花にぶつけてしまうのが本当に嫌だった。
「……溝口くん、ちがうよ」
凛花がそっと、俺の手に触れて優しく包み込んだ。そっと顔を上げて見れば、うっすらと涙が浮かべている。
「勝手なのは私の方だよ。目が覚めた時、お母さんもクラスメイトも、どうして溝口くんを責めているのかわからなかった。でも学校に行って溝口くんの辛そうな顔を見て、私が傷つけたんだと思った。この人が私を突き飛ばして事故に遭わせたんじゃない、私が君を傷つけた。だから少しでも周りの人にわかってほしくて、あんな宣言をしたの。根拠なんてなかったよ。気づいたら勝手に動いてた。……でもそれが溝口くんを追い詰めてた、知らなかったとはいえ、ごめ――」
「謝るな」
「……え?」
「謝るなよ。……生きていてくれて、よかった」
包まれた手を外して、自分の手を重ねる。眠っている時以来に握った彼女の手は暖かかった。
車道で動かなくなった凛花の姿を見たときは、本当に死んでしまったのだと思った。コンクリートに広がる赤い液体、ぴくりとも動かない身体、冷えた手は今も忘れられない。それがこうして今、目の前にいる。たとえ記憶の一部を無くしても目を覚ましてくれた。それだけが救いだった。
すると凛花も手を握り返してくれた。夕日はもう雲で隠れてしまったのに、頬は赤く染まっている。
「私は記憶を無くして、以前の私の気持ちに寄り添うことはできない。でも、その……」
「凛花?」
「……っ、私、溝口くんが――」
「……溝口くん、ちがうよ」
凛花がそっと、俺の手に触れて優しく包み込んだ。そっと顔を上げて見れば、うっすらと涙が浮かべている。
「勝手なのは私の方だよ。目が覚めた時、お母さんもクラスメイトも、どうして溝口くんを責めているのかわからなかった。でも学校に行って溝口くんの辛そうな顔を見て、私が傷つけたんだと思った。この人が私を突き飛ばして事故に遭わせたんじゃない、私が君を傷つけた。だから少しでも周りの人にわかってほしくて、あんな宣言をしたの。根拠なんてなかったよ。気づいたら勝手に動いてた。……でもそれが溝口くんを追い詰めてた、知らなかったとはいえ、ごめ――」
「謝るな」
「……え?」
「謝るなよ。……生きていてくれて、よかった」
包まれた手を外して、自分の手を重ねる。眠っている時以来に握った彼女の手は暖かかった。
車道で動かなくなった凛花の姿を見たときは、本当に死んでしまったのだと思った。コンクリートに広がる赤い液体、ぴくりとも動かない身体、冷えた手は今も忘れられない。それがこうして今、目の前にいる。たとえ記憶の一部を無くしても目を覚ましてくれた。それだけが救いだった。
すると凛花も手を握り返してくれた。夕日はもう雲で隠れてしまったのに、頬は赤く染まっている。
「私は記憶を無くして、以前の私の気持ちに寄り添うことはできない。でも、その……」
「凛花?」
「……っ、私、溝口くんが――」