見下ろすようにして言った彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。以前青山に注意したときの一方的な圧力をかける怒り方ではなく、今まで溜めていた感情が溢れないように抑えた言葉だった。
「溝口くんにだって考えがあるのかもしれない。それが凛花ちゃんのための行動だとしても、私は間違っていると思う。溝口くんの話をする凛花ちゃんはいつも楽しそうだった。……でも今は辛そうで見てられない。いくら私やさっちゃんが寄り添っても、大丈夫だよって笑って黙っちゃう。言えないって辛いんだよ。それは溝口くんだって同じでしょう」
「それは……」
「何年幼なじみやってても、話してみないとわからないことだってある。……それとも溝口くんにとって凛花ちゃんは、ただのご近所さん?」
「…………」
ここまで牧野に言わせて、やっと気づいた。
幼なじみだから、何となくお互いが考えていることを察して今までやってきた。でも結局は他人でしかない。血縁もなければ、想いを告げたこともない。
最後に腹を割って話したのはいつだっけ。――いや、そんな話すらしたことがない。ただ隣にいただけで、俺は凛花に何もしてやれない。ずっと助けられてきたのに、むしろ俺は凛花の存在を否定しようとさえしていた。
「……少なくとも、二人は似た者同士だと私は思うよ」
牧野はそう言って、俺と目線を合わせるように屈むと、じっと顔を見て頷いた。
「大分顔色が良くなったね。そろそろ動けそう?」
「あ……うん」
「じゃあ行こう! メリーゴーラウンド、あと三回は乗って貰わなくちゃ」
「三回?」
「そうだよ。だって私、今日は皆のカメラマンだもの!」