驚いての方を向くと、彼女はにやけたように頬を緩ませ、照れながらも姿勢良く木馬に乗っている森田を写した画面を見せて言う。

「凛花ちゃんに怒られたら、私があげたって言っていいからね」
「……なんで」
「凛花ちゃんのこと、好きじゃないの?」

 牧野が悪びれなく訊いてくると、俺は口をつぐんだ。誰かに言った覚えはないし、誰にも言うつもりもない。する牧野は「私にはそう見えたよ」と続けた。

「私達って、三年間同じクラスだったでしょう? 凛花ちゃん、ずっと私やさっちゃんに溝口くんのことを話してくれたんだよ。それこそ、小さい頃の話とか」
「小さいって、どこから……」
「み、溝口くんの恥ずかしい話とか、貶すようなことは聞いてないから安心して! でもね、私にはそれが一番嬉しそうに見えたの。……だから、凛花ちゃんが事故に遭って、記憶を失くしたって聞いた時は心配だったけど、溝口くんのことも心配だった」
「俺?」
「私やさっちゃんはまだ覚えていてくれたけど、溝口くんのことは一切覚えてない。それがずっと気がかりだった。溜め込みやすいって聞いてたし、責任感も強いのも知ってた。…‥だからきっと、さっちゃんはどうにかしてあげたかったんだと思うの」
「もしかして、青山がずっと俺に当たってきたのは……」
「さっちゃん、凛花ちゃんが大好きだから」

 牧野がメリーゴーラウンドに目を向ける。楽しそうに笑う凛花と青山を見て、カメラを手に取って立ち上がった。

「私、凛花ちゃんになりたかった。皆に優しくできて、明るくて、可愛くて、愛される人になりたかった。だからね、溝口くん。――これ以上、凛花ちゃんを苦しめないで」