「……撮れば? 森田の照れてる顔」
「えっ……!」
「あんな森田、二度と見られないかもしれないしさ」
「で、でも森田くん嫌がるかも……」
「カメラじゃなくてスマホだったらバレないんじゃない? もし見つかったら、俺に撮れって言われたって言っておけばいいし」
「それは溝口くんが悪くなっちゃうんじゃ……」
「いいよ。森田、優しいから。牧野が一番知ってるだろ」

 いつから好きなのかは知らないけど、少なくとも牧野の方が森田についてはよく知っているはずだ。俺がそう言うと、牧野は途端に頬を赤らめた。思わず手で顔を覆っても隠しきれていない。指の隙間から覗くようにしながら訊いてくる。

「……内緒にしてくれる?」
「もちろん」

 メリーゴーラウンドの発車メロディーが鳴る。牧野はカメラからスマートフォンに切り替えて、すかさず何枚か撮影する。その手際の良さに感心していると、音楽にあわせてメリーゴーラウンドがゆっくりと動き出した。

「撮れた! 送るね」
「それは良かった……?」

 送る? と首を傾げると、ポケットに入れっぱなしにしていたスマートフォンが震えた。

 取り出して見ると、牧野から個人チャットで一枚の画像が送られてきた。タップして拡大すると、満面の笑みを浮かべた凛花が白馬にしがみついている。何枚か撮っていたのは気付いたけど、まさか一緒に撮っていたなんて。