二人に続いて佐山も行こうとすると、森田が焦った様子で止める。

「待て佐山、お前も行くのか?」
「逆に森田は行かねぇの?」
「……さすがに」
「い、行っておいでよ! きっと楽しいよ!」
「うおっ……牧野、押すなって」

 渋った顔をする森田に、牧野が背中を押す。確かに男子高生がメリーゴーラウンドに乗るのに抵抗があるのもわからなくもない。佐山はともかく、森田は苦手なのだろう。

「こういうのは牧野の方が好きなんじゃ……」
「私は溝口くんと一緒に見てるから。写真、いっぱい撮っておくね」
「だってさ、森田行くぞー」
「今度は俺かよ……」

 佐山が引きずるようにして森田を連れていく。すでに凛花とさつきは二頭の白馬に乗って準備していた。

 俺は佐山に買ってもらったペットボトルの水をぐいっと飲み込んだ。先程に比べて吐き気も落ち着いてきたようだ。

 隣に座る牧野はバッグからミラーレスのカメラを取り出すと、メリーゴーラウンドに向けて構え、何度かシャッターを切った。構えも様になっている。そういえば彼女は写真部だったか。

「牧野、カメラ持ってきてたの?」
「うん。今日は沢山写真を撮るって決めてたから。あとで皆に送るね」

 牧野はそう言ってまたシャッターを切る。それに気づいた凛花が大きく手を振ると、笑って振り返した。

「溝口くん」
「ん?」
「今日の凛花ちゃん、可愛いね」

 突然の言葉に、思わず牧野を二度見をした。今もまだ笑顔で手を振っている。

「今日だけじゃなくて、いつも可愛い。元気で明るくて、私が一緒にいていいのかなって思ってしまうくらい、いつも眩しい」
「……急にどうした?」
「あ、森田くんたちも来たよ」

 青山が座る白馬の近くに佐山と森田がそれぞれの木馬に跨ると、こちらに向かって手を大きく振ってきた。牧野の視線は、若干恥ずかしそうに俯いている森田に向けられている。小声で「ふふっ照れてる」と小さく笑ったその横顔が、とても嬉しそうに見えた。