***

 佐山に振り回されるがまま、コーヒーカップにバイキング、さらにもう一回ジェットコースター。牧野の体調が良くなり、森田と共に合流するまでの数十分で、三つの激しいアトラクションを制覇するのに付き合う羽目になった。

 最初に乗ったジェットコースターで酔わなかったからか、調子に乗ったのかもしれない。俺は回る視界のせいで乗り物酔いを起こし、ベンチに張りつくようにへばっていた。これには敵視していた青山も呆れ、佐山をキッと睨んで叱り出した。いつも騒がしい佐山が珍しくしゅんと落ち込んでいる。

「ただでさえアンタのテンションについていける人が少ないんだから、ちょっとは考えなさいよ!」
「ハイ……ちょっと調子に乗りました……」
「ちょっとじゃないでしょ、もう。溝口、水飲めそう?」
「ありがとう……けど、動くと気持ち悪い」
「この状態じゃ、ごはんも食べれないよね」
「匂いがキツイ」

 座っているベンチから少し離れたところに、フードコートが設営されている。すでに昼時であり、来場者が軽食を買って食べたり、持ってきたお弁当を広げている。過ごしやすい気候だが、風に乗ってやってくる食べ物の匂いに釣られ、胃から込み上げてくるのを飲み込むばかりだ。すると、凛花が四人に向かって尋ねた。

「皆、お腹空いてる?」
「私は大丈夫だけど……千佳は?」
「私も平気だよ」
「俺さっきポテト買って食ってた!」
「お前、溝口が気持ち悪くなったのそれが原因じゃねぇの……?」
「へ? そうなの?」
「……まあいい、俺も平気だ。全員が問題なければ、昼飯は後にまわすか」
「そうだね。フードコートもいっぱいあるし、もうちょっと遊ぼう! 私、メリーゴーラウンド乗りたい。さっちゃん行こう!」
「ちょ、ちょっと凛花!」

 気を遣ってくれたのか、俺の体調が戻るまで別のアトラクションに乗るらしい。
 凛花はさっそく青山の手を引いてメリーゴーラウンド乗り場に向かっていった。ベンチから座っていても顔が見えるほど近い場所にあった。