二人が計画していたことを当人に知られなければ問題はないだろう。
 そう言って促すと、凛花が計画の内容を説明する。佐山は納得したように「わかった」と頷いて続けた。

「そんな楽しいこと企ててたのなら先に言えよな! そしたら事前に情報収集してやったのにー」
「だって佐山に言ったら、すぐにバレそうだったんだもの」
「俺は結構口が固い方なんだけどな……なんで溝口は知ってたんだよ?」
「古賀から聞いた」
「そのお隣さん特権はどこでも有効かいっ! ……まあいいや。とりあえず次行こうぜ。俺、ウォータースライダー乗りたい」
「いいね! でも溝口くん、次乗れそう?」
「うん。ダメだったら一人で見てる」

 森田と牧野を置いて、次のアトラクションに向かう。凛花と青山が先導する中、佐山が小声で聞いてくる。

「女子は怖いねぇ。いつから計画してたんだ?」
「俺が聞いたのが、事故に遭う前だから……五月くらいか。牧野には話していないらしい」
「そっか。うーん……」
「なにか引っかかることでもあるのか?」
「俺、森田とは中学から一緒なんだけどさ、特定の女子を褒め続けてた子が牧野ちゃんくらいしかいないんだよ。だから別にこんな大がかりにしなくてもくっつくと思っててさ」
「時間の問題だったってこと?」
「そういうこと。まぁ、森田が県外の大学志望してるから、あの子も焦ってるのかもな。来年会えるかもわからないし」

 コレ内緒な、と佐山が言うと、アトラクションの順番について話していた凛花と青山の話に加わった。後ろから三人を見て、ふと足を止めた。

「時間の問題、か」

 来年の今頃の自分は大学の課題に明け暮れているのだろうか。それともアルバイト三昧になっているかもしれないし、嫌になって中退しているかもしれない。

 明日の事さえわからないのに、一年先の未来のことなどわかるはずがない。だから牧野は森田に少しでも近付けるように勇気を出して誘ったんだろう。お節介だとわかっていながらも、大切な友人のために凛花と青山はこの計画を立てた。
 佐山と森田が賛同してくれたのも、いつか一緒に遊ぶ機会を今ここで実現したかったかもしれない。

 ――そう考えると、凛花を傷つけないようにと遠ざけた俺は、随分都合のいい奴だな。