ようやく地上に戻ってきたのは、更に回転を繰り返した数分後だった。
 最初とはいえ、久しぶりに体感するアトラクションは負担がかかり、安全バーが身体から離れると途端に前の座席に倒れ込んだ。

「いやー楽しか……って、溝口大丈夫か? 立てる?」
「大丈夫……ちょっと、気が抜けた」

 決して怖くなかったと見栄を張るつもりはない。奇跡的に乗り物酔いを起こさなかったことに安堵して立てなくなっただけだ。佐山の肩を借りて立ち上がり、乗り場から離れる。

「そっか! じゃあ次行こうぜーっ! どこがいい?」
「おまっ……なんでそんな元気なわけ?」
「え、溝口くん酔った?」

 後ろの座席に座っていた凛花が降りながら聞いてくる。隣にいた青山も何の問題もなく楽しめたらしい。

「まだ大丈夫。……そうだ、牧野は? 乗る前にジェットコースターが苦手だって言ってたけど」
「少し下のベンチで休むって。森田くんも一緒だから大丈夫だよ」
「そっか」

 よかった、とホッと胸を撫で下ろす。牧野も自己主張をあまりしないタイプだから、隠し通すのではないかと懸念していたのだ。多分いち早く気付いたのは森田だろう。

「じゃあ俺達も森田たちと合流する? 溝口もこんなんだし」
「えっ! あの、ええっと!」
「佐山、うちらはうちらで回ろうよ! 千佳たちにも言われてるからさ」

 凛花と青山が慌てて佐山を止める。乗り物酔いをした牧野と介抱している森田をどうにかして二人きりにさせたいようで、さすがの佐山も首を傾げた。

「なんかお前ら怪しくね? わざと二人きりにさせようとしてるっていうか……」
「そ、そそそんなことないよ?」
「噛みまくってるじゃん。……まぁ、牧野ちゃんから行こうって誘われたとき、森田にしか言ってなかったから、何となく予想できているんだけどさぁ」
「……二人とも、もう話したら? 佐山も協力してくれるかもよ?」