「本当に奢ってくれた……」
「奢ってもらうつもりだったんじゃないの?」
「そうだけど……レジに持っていくの早いんだもん。ビックリした」

 不貞腐れている凛花を横目に、俺はフルーツミックスバーの封を切る。

 オレンジ、というよりニンジン色のアイスバーが現れて、何の気なしにそのまま口に運ぶ。フルーツの甘酸っぱさとシャリシャリとした氷が喉を通っていくと突然、こめかみに激痛が走った。思わず顔をしかめ、無意識にアイスバーを遠ざける。

「あ、今キーンってなったでしょ」
「……保冷剤が欲しい」
「何に使うの?」
「額を冷やして痛みを相殺する。これが結構効くんだよ。かき氷とかおすすめ」

 カップアイスならまだしも、棒アイスだとこれができないから不便だ。頭に響く痛みを我慢して治まるのを待つ間、横では凛花がバニラアイスを小さくかじり、口のなかに広がる甘さの余韻を楽しんでいた。

「頭が痛い小太郎くん、バニラアイスはいかが?」
「……もらう」

 少し痛みが引いたところで、差し出されたバニラアイスのまだ口をつけていないところを一口かじる。フルーツ系の甘さとは違った、ふんわりと香るバニラと濃厚なミルクの甘さに思わず頬を緩めた。

「やっぱアイスはバニラだよな。安定すぎて落ち着く」
「そんなこと言って、今日はミックスフルーツじゃん」
「……やっぱりバニラにすればよかった」
「え、なんの後悔?」
「お返しいる?」
「いいの? もらうっ!」

 今度は俺が差し出したフルーツアイスバーを、凛花が大きな口を開けてかじりついた。吟味しながら食べ終えると、次第に凛花の眉間にシワが寄っていく。