二人して家を出ると、駅の方向とは真逆に歩き出す。駅の方向には凛花の家の前を通ることになるから、なるべく遠回りをしたい。

「あれ? 駅あっちだよ?」
「いつのも道を使ったらおばさんと鉢合わせするかもしれないだろ」

 凛花が一番気にしているのは、おばさんが遊園地行きを渋々承諾したことだ。途中で帰ってくるように言われたり、迎えにくるかもしれない。

 ……被害妄想過ぎるって? 結構ガチだよ。
 それに俺が一緒だと、なお印象が悪い。だからできるだけ早く家を出たかった。

「……気づいてたの?」
「顔に書いてあった。遠回りになっても予定時間には余裕で間に合う。案外こっちの道の方が駅が近かったりするから」
「そうなんだ……溝口くん、沢山知ってるんだね」
「そりゃ、引っ越してきてからずっとここにいるからな」

 小学校に上がる前だから、十二年くらいになるだろうか。気付けば凛花ともそれくらいの仲になるかもしれない。
 遠回りをして駅に向かう道中、住宅街を抜ける朝の光景が新鮮だったのか、凛花は辺りを見渡しながら歩く。途中で千鳥足みたいになってこけそうになると、慌てて腕を掴んで留まらせた。

「あ、ありがとう」
「ちゃんと歩けよ。階段から落ちそうになったときもそうだっただろ」
「うっ……で、でもここ! 初めて来た気がしなくって……」
「だろうな」
「え?」
「住宅街を突っ切って駅に向かう近道は、俺が凛花(・・)に教えたんだから」