夏休みに入った。七月の後半から八月の中旬までの約一ヵ月の間、お盆に入る前に補習が設けられているが、それ以外は部活がなければ登校する必要はない。
つまり、元々部活に入っていない俺は、当面の間、外出中に偶然、遭遇することがなければ、クラスメイトたちと顔を合わせることがない――
「おはよう、溝口くん! 準備できてるかな?」
――はずだった。
休みに入って一週間ほど経ったある日の平日。父さんの出勤時間に合わせて起床し、朝食を済ませたところで玄関のチャイムが鳴った。
迎え出ると、そこには凛花の姿があった。水色のシャツワンピースに黒のスニーカー姿、白のショルダーバッグを肩にかけている。茶髪は毛先を緩く巻いており、いつになく活き活きとした表情をしている。
結局、凛花たちが当てた遊園地のチケットのあまり一枚分は、俺がもらうことになった。凛花が俺の両親に許可を貰いにきた時点で、ほぼ確定になったのは目に見えていたけど、決まった後に佐山から喜びの電話がかかって来たのは予想外だった。メッセージのグループにも参加させてもらい、牧野によって日程と集合時間が知らされ、今日にいたる。
「……いくら何でも早ぇよ。集合は駅に十時のはずだろ? まだ九時にもなってないし」
「そうだけど、ちょっと……」
苦笑いをする凛花が視線を逸らした。どうやらおばさんの小言を聞かされる前に出てきたらしい。ひとまず凛花を家の中に入れてリビングに通すと、掃除をしていた母さんが目を輝かせて凛花を迎えた。
つまり、元々部活に入っていない俺は、当面の間、外出中に偶然、遭遇することがなければ、クラスメイトたちと顔を合わせることがない――
「おはよう、溝口くん! 準備できてるかな?」
――はずだった。
休みに入って一週間ほど経ったある日の平日。父さんの出勤時間に合わせて起床し、朝食を済ませたところで玄関のチャイムが鳴った。
迎え出ると、そこには凛花の姿があった。水色のシャツワンピースに黒のスニーカー姿、白のショルダーバッグを肩にかけている。茶髪は毛先を緩く巻いており、いつになく活き活きとした表情をしている。
結局、凛花たちが当てた遊園地のチケットのあまり一枚分は、俺がもらうことになった。凛花が俺の両親に許可を貰いにきた時点で、ほぼ確定になったのは目に見えていたけど、決まった後に佐山から喜びの電話がかかって来たのは予想外だった。メッセージのグループにも参加させてもらい、牧野によって日程と集合時間が知らされ、今日にいたる。
「……いくら何でも早ぇよ。集合は駅に十時のはずだろ? まだ九時にもなってないし」
「そうだけど、ちょっと……」
苦笑いをする凛花が視線を逸らした。どうやらおばさんの小言を聞かされる前に出てきたらしい。ひとまず凛花を家の中に入れてリビングに通すと、掃除をしていた母さんが目を輝かせて凛花を迎えた。