返す言葉を探していると、後ろで黙って聞いていた母さんが凛花に尋ねる。

「凛花ちゃん、夏休みになにかあるの?」
「えっと、全部じゃなくて、一日だけ遊びに行きたいんです。隣町の遊園地なので、そんなに遅くならないんですけど」
「あら、いいじゃない。でも皆高校生でしょう? 自分の親ならともかく、私の許可っているのかしら」
「実はその……母のことで」

 途端、凛花は言葉を詰まらせた。
 話を聞けば、遊園地に行く話が出た途端、真っ先に俺がいるか確認したらしい。

「でも彼を誘おうって言い出したのは私なんです。佐山くんや森田くん……彼の友達なんですけど、二人も溝口くんを誘ってくれたんです。だからできれば一緒に行きたくて。母を説得してきました」
「……もしかして、おばさんに話したのか?」
「全部話した。さっちゃんたちも一緒だし、二人きりにならなければいいって大目に見てもらえたの。でも溝口くんはきっと、お母さんのことを考えちゃう。それにおばさんが私のことを迷惑に思ってたら、それこそ一緒にいけなくなる。……だから許可を貰いに来ました」

 珍しく弱腰な凛花は、不安そうな表情で母さんを見る。少し考えると、凛花と目線を合わせるようにして屈んだ。

「凛花ちゃん。私も旦那も、あなたが迷惑だと思ったことはないわ。むしろ感謝しているの」
「え……」
「引きこもりだった小太郎を外に連れ出してくれたのは、紛れもなく凛花ちゃん、あなたなの。だから事故に遭ったと聞いた時は驚いたし、すごく心配した。今こうして話せていることが嬉しいし、小太郎を忘れてしまってもまた手を引いて外に連れ出そうとしてくれている。仲良かった二人をまた見ることができて、私は満足よ」