すると、ちょうどコンビニから人数分のアイスを買ってきた佐山が戻ってきた。レジ袋から取り出して、それぞれ頼んだアイスを受け取る。途端、手にしたパッケージを見ながら森田が顔をしかめた。

「俺、こんなの頼んだっけ？」
「へ？　フルーツ系が良いって言ったの森田じゃん」
「フルーツミックスなんて初めて見たぞ」
「それって……」
「溝口、食べたことあるのか？」

　渋々袋を破って中のアイスバーを取り出す。いつか見たオレンジ色に、思わず苦笑いをした。

「……え、溝口が笑ってる!?」
「そんなに美味いのか？」

　どうして思ったのかわからないが、慌てて森田がそのオレンジ色のアイスバーをかじった。そのタイミングに合わせて言う。

「俺的にはないかな」

　早く教えろと言わんばかりにこちらを睨んでくる。珍しく森田のいろんな表情が見れることに、ちょっとだけ楽しんでいる自分がいた。

「……これ、フルーツミックスというよりニンジンだな？」
「だよな。俺も思った」
「森田、一口くれ！」
「絶対嫌だ」

　アイスめがけて顔を突き出してくる佐山の額を押さえながら、森田はまた一口食べた。
　前から知っていたけど、森田は何事にも器用だ。難しいものもできる範囲で対処するし、口数は少ない方だけど、クラスメイトを敵に回すようなことはしない。必ずどこかでフォローを入れているのも、森田だからこそできることだ。
　見習わないといけないな、と思いながら、自分の分のアイスを取り出す。

「ところで溝口、どうして嘘ついた？」
「……え？」

　俺が苦戦して食べていたフルーツミックスのアイスを半分ほど食べ進めた森田が聞いてくる。佐山も大人しく自分の分で買ったワッフルコーンのソフトクリームを食べようとしていた時だった。

「遊園地の話。断ったって嘘だろ」
「…………」
「傷つけないために嘘をついて、自分にしわ寄せが来てたら意味がないと思う。……人ってさ、結局何かを傷つけないと生きていけないから、せめてその後にできてしまった傷を癒す道を考えたっていいだろ」
「それは……」
「なぁ溝口」

　カップから出したソフトクリームの先端を俺の方に向けると、佐山が自信満々に言う。

「俺達には嘘つかなくていいぞ。話なんていくらでも聞いてやるし、一緒に悩んでやる」

　佐山の話に森田が頷く。凛花のことなんて今はどうだっていいのに、関わらないようにすることだけを考えていたのを見透かされていた。

「……これ、自作自演じゃないよな？」
「お前を騙せるほどの演技ができたら、きっと今頃スカウトされてるっつーの！」
「そうだな。……それでだ、溝口」

　――お前は古賀とどうなりたい？

　森田の問いかけに、俺は答えられなかった。
　二人の思いに胸がいっぱいだったのもある。それでも簡単には口にできないのは、幼なじみの関係をこれ以上壊したくないから。

　俺だって思ってた。

　アイツの隣にいるのが明日も俺であると、自惚れるほど疑わなかったのだから。