「ぞ、ゾンビのゲーム、気になってて」
「……ふーん」

 何もおかしくない理由を言ったのに、森田は勘繰るようにじいっと見てくる。あれ、こんな奴だったっけ。困惑していると森田が突然、佐山と俺の肩をガシッと掴む。

「も、もも森田……?」
「……負けた奴、アイス奢りな」

 口元を少しだけ緩ませて言うと、手を離して教室を出ていく。俺が呆気を取られていると、佐山がケラケラ笑いながら教えてくれた。

「めっちゃ喜んでたな! あんな笑顔、ちょー久々に見たよ」
「……笑ってた?」

 思わず目を擦って後ろ姿の森田を二度見した。


 二人と共に学校を出て、駅近くのゲームセンターに入る。特有の騒音があまり得意じゃないから、来ることはほとんどない。だから最近のゲームや、今までもあったものに新要素が追加されているのを見て、目を回しそうになった。

 以前、佐山がやりたいと言っていたゾンビを倒すシューティングゲームは、森田の圧勝と佐山の全敗で終わった。スマートフォンのゲームくらいしかやらなかったけど、これはこれで楽しい。

 一通り遊び終えてゲームセンターを出ると、近くのコンビニで一番多く負けた佐山がアイスを買いに行くことになり、俺と森田は駐車場で待っていた。

「森田、ゲーム上手いんだな」
「まぁ、佐山に鍛えられたからな」
「佐山に?」
「アイツ、根っからのゲーマーだからな。……俺と佐山は中学が同じだから、帰りに時間が合えばゲーセンに行って、徹底的に叩きこまれたんだよ」

 森田の話によれば、同じクラスになったことは一度もなかった佐山が「対戦相手がほしい」という理由で校内を探していたところ、直感で決められて強制的に連れていかれたのが始まりだったという。

「佐山って不思議な奴でさ、俺が気を張っている時に必ずゲーセンに連れていくんだ。そういう空気を俺が出してるのが気に食わないのかもしれないけど、何度も助けられてんだよ」
「森田……」
「今度、本気の佐山と対戦してみろよ。きっと一点も取らせてもらえねぇから」

 自慢げに言う森田は、どこか嬉しそうだった。中学からの縁がここまで固く強いものならば、俺と凛花はいつからこんなに脆かったんだろう。

「なになにー? 何の話ー?」