女子三人の話に割って入ってきたのは佐山だった。
 あまりにもあっけらかんというから、その場にいた誰もが顔を見合わせる。俺にいたっては佐山を二度見した。
 お前、俺と青山がギクシャクしてるの知ってるだろ! そう念じて佐山を睨むと、パチン、ときれいなウィンクを受ける。

 コイツ、知っててわざとやりやがった!

「溝口……? なんで?」
「なんでって、俺も森田も遊んだことないし、ちょうどいいじゃん? なあ、森田はどう?」

 離れている席などお構いなしに問いかけてくる佐山に、森田は鼻で笑った。

「そうだな。なんだかんだで溝口と出掛けたことないしな」
「だろ? あそこの遊園地、ゲームセンターもあるんだぜ。最新のシューティングゲームで対戦しよ!」
「遊園地なんだからアトラクションに乗ろうぜ。シューティングゲームの新作なんて、駅前でいつでもできるだろ」
「…………えっと」

 思わず視線を逸らした。
 以前であれば渋々了承していただろう。でもこれ以上、凛花と関わる機会が増えることは、事故当時の記憶を思い出すリスクが高まるかもしれない。この間、一緒に帰った時も何か思い出そうとする素振りもあったし、できれば控えたいところだ。

 それに加え、学校では大目に見てもらえているが、彼女の母親は未だに俺のことを良く思っていない。娘を大事に思うあまり「校内でも近付くな」と、毎朝彼女にいいつけているのを、玄関先で見かけたことがある。この状況で遊園地に行くとなれば、当然黙ってはいないだろう。
 そして、もう一人――。

「――なんで、なんでそんな奴誘うの?」

 佐山と森田の提案に、青山が声を震わせた。今まで非協力的な俺がすんなり凛花と行動を共にしている事を良く思っていない。
 凛花が俺の次に一緒にいる時間が長いのは、きっと青山だ。彼女からしたら、俺は親友を傷つけた最低な相手になる。近くにいることすら許せるはずがない。一度落ち着いたと思ったが、内心は怒りに震えていたのだろう。
 青山は凛花の肩を掴んで懇願する。