「――古賀ちゃん、予知能力でも持ってんの!?」

 一時限目の数学を終えてすぐ、慌てた様子の佐山が席から飛び上がると、次の授業の教科書を出そうとしていた凛花に迫った。
 授業開始と同時に配られた小テストは、まだ授業では取り扱っていない問題に皆が顔をしかめた。テストには今朝、凛花が聞いてきたあの問題がそっくりそのまま出題されていたのだ。思わず佐山が「あぁ!?」と声を出すほど驚いて立ち上がってしまうほどで、先生から注意を受けるはめになった。他のクラスメイトも習っていないと声を上げるも、「ただわからないからそう言っているだけ」だと決めつけた先生がテストを続行。採点は散々な結果になった。それを見てようやく、授業が先行している隣のクラスと間違えてテストを持ってきたらしい。

 先生のミスとはいえ、凛花の言った通りだった。今までも彼女の直感が当たるところは見てきたが、これには俺も驚きを隠せずにいた。

「俺ちょーびっくりして! 声出しちゃったもん!」
「た、たまたまだよ。佐山くんは解けた?」
「答えだけ書いたんだ。……森田が解いてたから」
「カンニングしてんじゃねーよ」

 森田が軽く佐山を小突く。小テストであの問題を解けたのは、――佐山の不正を含めて――俺達四人だけだったから、驚くのも無理はない。
 佐山と凛花が話に熱中する中、森田が小声で俺に聞いてきた。

「お前と古賀は幼なじみなんだろ? 似たようなことは今までもなかったのか?」
「……似たようなことはあったな。飼っていたハムスターがあと何日後に死んじゃうとか、いじめっ子がジャングルジムから落ちて骨折するとか」
「なんで全部不吉なモンばっかりなんだよ」

 森田が顔をしかめて言う。
 実際にその通りだった。凛花の直感はいつも、誰かの不幸に近いものばかりだった。小テストだって、ろくに勉強をしていない生徒にとっては最悪も同然だろう。