何を言っているんだ、と聞き返そうとして飲み込んだ。空を見上げる凛花の横顔が、いつになく寂しそうに見えたからだ。

 昔からそうだった。
 小学校に上がってすぐ、飼っていたハムスターが亡くなる前日に遊びに行った時も、死期を悟っていたのか今と全く同じ顔をしていた。あの日から月日が流れても、何か悲しいことがあるたびに寂しさを噛みしめ、堪えるように口をつぐむ。

 俺はその顔が苦手だった。いつも見せない一面を隠し見てしまったような気がして、慌てて目を逸らす。気まずい空気が流れる中、視界の端にあったコンビニを見てピンときた。

「コンビニ寄るけど、お前どうする?」
「え……?」
「暑いし、アイスでも買おうと思って。食べる?」
「食べる! って、ちょっと待って!」

 俺が歩き出すと、慌てて凛花が小走りで隣に並んだ。先程の浮かない表情から一転、嬉しそうに頬を緩めた彼女を見て、ほっと胸を撫で下ろす。

「せっかくなら駅前のクレープにしようよ。小太郎の奢りで!」
「奢りはコンビニ限定デース。……つか、明日お前行くんだろ。食べ過ぎると太るぞ」
「うっ……失礼ね!」

 並んで歩くのは中学以来だろうか。あの頃は肩を並べても変わらなかったのに、いつの間にか、俺が追い越して彼女を見下ろすようになってしまった。

 それだけじゃない。幼い頃から色素が薄かった凛花の髪は、中学での部活引退後から色をさらに入れて綺麗な茶髪に染まった。周りの影響でメイクをするようになった。俺とは違い、高校生活を存分に楽しんでいるようで、学校でも控えめにメイクをしているらしい。

 幼い頃の二人からどんどん変わっていく。

 過去に戻ることは出来ないからこそ懐かしくて、少し寂しく思えてしまう。未練がましく聞こえるだろうが、それほど学校で彼女と関わることが減った。

 それでも凛花と歩く距離や歩幅が、あの頃から変わっていないことだけが救いだった。