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凛花を家まで見送ると、数軒先にある自宅に入った。玄関からはスパイシーな香りが漂っている。どうやら夕食はカレーらしい。玄関のドアの音が聞こえたのか、リビングからバタバタと母さんがやってきて、顔を見るなり心配そうな顔を浮かべたかと思えば、一瞬にしてムスッとふくれっ面になった。
「小太郎! 帰るときは連絡してって言ったじゃない!」
「は? 学校が終わった時点で入れたよ」
「来てなかったわよ?」
「……あ、ごめん。父さんの方に送ってた」
スマートフォンを確認して見せると、母さんは呆れたように頭を抱えた。登録が「溝口父」「溝口母」と並んで登録されていれば、間違って送ってしまうのも無理はない。つい最近連絡を取ったのが父さんだったのもあるかもしれない。
靴を脱いでいると、母さんがどこかソワソワした様子で聞いてくる。
「凛花ちゃんと何かあったの?」
「……なんで?」
「アンタが操作ミスするのって落ち込んだ時か、凛花ちゃんとなんかあった時だからね。言いたければ話してくれたっていいのよ?」
「絶対言わない」
鞄を持ったままリビングに向かうと、テーブルには食べかけのカレーが置かれていた。手洗いを済ませてテーブルにつくと、ものの数分で野菜がごろごろ入った夏野菜カレーとサラダが目の前に並んだ。食べ進めていると、母さんが思い出したように言う。
「そうだ、いつものバニラアイス買ってきたから食べてね」
「んぐっ!?」
「え? なんかおかしいこと言った?」
「ご、ごめん。……アイス、食べて帰ってきたからさ」
「あらそうだったの? 凛花ちゃんと?」
「なんでもセットにするな」
「だってアイスといったら凛花ちゃんでしょ? アンタ、小さい頃転んで泣いちゃった凛花ちゃんに自分のアイスあげてたじゃない。よく覚えてるわ」
嬉しそうに話す母さんの言葉に、おそるおそる問う。
「ねぇ、それってラムネだった?」
「どうだったかしら。でもアンタはバニラしか食べなかったから、バニラじゃない?」
そう言って途中だった食事に戻る。微かに生まれた希望をかき消すようにカレーを口にかき込んだ。いつもより塩辛く感じた。
凛花を家まで見送ると、数軒先にある自宅に入った。玄関からはスパイシーな香りが漂っている。どうやら夕食はカレーらしい。玄関のドアの音が聞こえたのか、リビングからバタバタと母さんがやってきて、顔を見るなり心配そうな顔を浮かべたかと思えば、一瞬にしてムスッとふくれっ面になった。
「小太郎! 帰るときは連絡してって言ったじゃない!」
「は? 学校が終わった時点で入れたよ」
「来てなかったわよ?」
「……あ、ごめん。父さんの方に送ってた」
スマートフォンを確認して見せると、母さんは呆れたように頭を抱えた。登録が「溝口父」「溝口母」と並んで登録されていれば、間違って送ってしまうのも無理はない。つい最近連絡を取ったのが父さんだったのもあるかもしれない。
靴を脱いでいると、母さんがどこかソワソワした様子で聞いてくる。
「凛花ちゃんと何かあったの?」
「……なんで?」
「アンタが操作ミスするのって落ち込んだ時か、凛花ちゃんとなんかあった時だからね。言いたければ話してくれたっていいのよ?」
「絶対言わない」
鞄を持ったままリビングに向かうと、テーブルには食べかけのカレーが置かれていた。手洗いを済ませてテーブルにつくと、ものの数分で野菜がごろごろ入った夏野菜カレーとサラダが目の前に並んだ。食べ進めていると、母さんが思い出したように言う。
「そうだ、いつものバニラアイス買ってきたから食べてね」
「んぐっ!?」
「え? なんかおかしいこと言った?」
「ご、ごめん。……アイス、食べて帰ってきたからさ」
「あらそうだったの? 凛花ちゃんと?」
「なんでもセットにするな」
「だってアイスといったら凛花ちゃんでしょ? アンタ、小さい頃転んで泣いちゃった凛花ちゃんに自分のアイスあげてたじゃない。よく覚えてるわ」
嬉しそうに話す母さんの言葉に、おそるおそる問う。
「ねぇ、それってラムネだった?」
「どうだったかしら。でもアンタはバニラしか食べなかったから、バニラじゃない?」
そう言って途中だった食事に戻る。微かに生まれた希望をかき消すようにカレーを口にかき込んだ。いつもより塩辛く感じた。