一通り話終えた凛花がこちらを見て首を傾げる。
 顔こそ背けているが、自分でもわかるほど体温が急上昇していた。アイスこそすべて食べ終えているが、棒を握ったまま固まってしまうほど、初恋話に耐性がほとんどない俺には荷が重すぎた。

「溝口くん? なんでこっち見てくれないの?」
「いや、その……」
「もしかして恋バナ苦手だった? だとしたらごめんね。知らなかったとはいえ、ちょっと話しすぎたかも」
「……確かにそういう話は苦手だけど、お前にとって大切な思い出なんだろ? 残っててよかったじゃん」

 凛花が顔を上げて小太郎の方を見ると、耳まで真っ赤に染まっていた。アイスこそすべて食べ終えているが、棒を握ったまま固まっている。小太郎の目の前で手を振ったり、頬をつねったりしてようやく解かれるが、一向に凛花の目を見ようとはしない。

「溝口くん? なんでこっち見てくれないの?」
「いや、その……」
「もしかして恋バナ苦手だった? だとしたらごめんね。知らなかったとはいえ、ちょっと話しすぎたかも」
「……確かにそういう話は苦手だけど、お前にとって大切な思い出なんだろ? 残っててよかったじゃん」
「そうだけど……溝口くんがそっぽを向いているのが気になる」
「他人の惚気を聞く耐性がついてないだけだ。ちょっとは放っとけ」

 ヤケになって言うと、握ったままの棒をレジ袋に捨ててベンチから立ち上がった。

「さっさと食べないと置いてくぞ」
「ちょ……待ってよ!」

 残っていたアイスを口に詰め込むと、凛花も急いで立ち上がり、隣にやってくる。途中でキーンと頭痛が襲い掛かると、嫌味を込めて頭に手を置いてやった。適度に振動を与えると、頭痛と重なってだんだんとしかめっ面になる。

「いっ!? ……溝口くん、悪戯がすぎるよ!」
「ゴミ寄越せ。捨てとくから」
「わかった、わかったからぐりぐりしないでって!」

 食べ終えた棒をレジ袋に入れても、俺は凛花の頭に手を置いたままだった。むしろ抑えつけて、自分の顔を見せないように牽制している。いくら反抗されても、真っ赤に染まっているであろうこの顔を見られたくない。横目で見ると、なぜか嬉しそうに笑っている凛花がいた。