ああ、こんなタイミングで聞きたくなかった……。
 頭を抱えて溜息をつくと、凛花は「本当に大丈夫? 温かいもの買ってこようか?」と心配そうに聞いてくる。どうやらアイスの冷気に当てられて頭痛を起こしているのだと思っているらしい。夏場のコンビニで温かい飲み物といえば、常温のペットボトルか紙コップで提供されるホットコーヒーくらいだろう。

「だ、大丈夫だから。……それで? お前は好きな人を思い出したい。おまけで俺のことも思い出したいってこと?」
「ちちちがうよ! おまけなんかじゃない!」
「わかったわかった」
「絶対信じてないでしょ!」
「信じる信じないはともかく、言うのはタダだよ。思い過ごしってこともあるだろ?」
「ちゃんといるもん! ……初恋は、ちゃんと覚えてる」

 好きな人、初恋。――次々に凛花から出てくる言葉や、恥じらう仕草を見た途端、眩暈がする。十年近く幼なじみをしているが、彼女がこんなにも乙女チックだとは知らなかった。
 それと同時に、彼女の初恋の相手が気になって仕方がない。わかっているとすれば、幼なじみであることすら忘れていた自分は、もちろん対象外だろうと思った。
 まだアイスが残っている棒をいじりながら、凛花はぽつぽつと話し始めた。