思い返してみれば、最初からバニラアイスしか食べなかったのは俺の方だ。
どちらかといえば、凛花のお気に入りは真っ白なアイスよりも、青空のように澄んだラムネのアイスバーだった気がする。どのタイミングでバニラに乗り換えたのかは、本人にしか分からない。
すると、もう一口食べた凛花が聞いてくる。
「ねぇ、この間っていうのは、事故に遭う前のこと?」
「……うん。まあ」
「大丈夫だよ。思い出すために聞いているんじゃなくて、溝口くんのことを忘れてしまった私が、同じアイスを好きになるってなんか偶然に思えなくて。だから、このアイスもきっと、記憶の鍵になるんだと思うんだ!」
食べかけのアイスを夕日にかざす。真っ白なバニラは、夕焼けのオレンジに染まった。
「……そこまでして、なんで俺のことを思い出したいの? もしかしたら事故の記憶も蘇るかもしれないのに」
「それは……その」
凛花は言葉を詰まらせ、目を逸らしてバニラアイスを一口かじる。珍しく恥じらうような素振りを見てあのふざけた仲介人が言っていた「秘密」が絡んでいるのではないかと思った。
ここで聞き出せたら、一気に状況が変わる。ただ、どうやって問い詰めたらいいかわからなかった。
髪の毛先をいじりながら、凛花は目を逸らしたまま答える。
「わ、忘れているのが溝口くんだけとは限らないでしょ? 私しか関わっていない人を忘れているかもしれない……だから、思い出したいなって」
「へぇ。そんな人がいるの?」
「いるよ! ……す、好きな人……とか」
「うぐっ……!?」
思いもよらぬ発言に、何も気なしに食べたアイスが喉に詰まりそうになって途端、ひどくむせた。
「だ、大丈夫? お茶買ってくる? それとも麦茶のほうが……」
「それどっちもお茶だから。……大丈夫、むせただけ」
背中を擦ろうとした凛花を片手で払うように止める。アイスはとうに喉を通っているのに、わざと咳をして顔を背けた。
軽率に聞いたことを後悔した。長い付き合いだというのに、好きな人がいたなんて初耳だ。
どちらかといえば、凛花のお気に入りは真っ白なアイスよりも、青空のように澄んだラムネのアイスバーだった気がする。どのタイミングでバニラに乗り換えたのかは、本人にしか分からない。
すると、もう一口食べた凛花が聞いてくる。
「ねぇ、この間っていうのは、事故に遭う前のこと?」
「……うん。まあ」
「大丈夫だよ。思い出すために聞いているんじゃなくて、溝口くんのことを忘れてしまった私が、同じアイスを好きになるってなんか偶然に思えなくて。だから、このアイスもきっと、記憶の鍵になるんだと思うんだ!」
食べかけのアイスを夕日にかざす。真っ白なバニラは、夕焼けのオレンジに染まった。
「……そこまでして、なんで俺のことを思い出したいの? もしかしたら事故の記憶も蘇るかもしれないのに」
「それは……その」
凛花は言葉を詰まらせ、目を逸らしてバニラアイスを一口かじる。珍しく恥じらうような素振りを見てあのふざけた仲介人が言っていた「秘密」が絡んでいるのではないかと思った。
ここで聞き出せたら、一気に状況が変わる。ただ、どうやって問い詰めたらいいかわからなかった。
髪の毛先をいじりながら、凛花は目を逸らしたまま答える。
「わ、忘れているのが溝口くんだけとは限らないでしょ? 私しか関わっていない人を忘れているかもしれない……だから、思い出したいなって」
「へぇ。そんな人がいるの?」
「いるよ! ……す、好きな人……とか」
「うぐっ……!?」
思いもよらぬ発言に、何も気なしに食べたアイスが喉に詰まりそうになって途端、ひどくむせた。
「だ、大丈夫? お茶買ってくる? それとも麦茶のほうが……」
「それどっちもお茶だから。……大丈夫、むせただけ」
背中を擦ろうとした凛花を片手で払うように止める。アイスはとうに喉を通っているのに、わざと咳をして顔を背けた。
軽率に聞いたことを後悔した。長い付き合いだというのに、好きな人がいたなんて初耳だ。