「……アイス、食べる人ー?」
「アイス……?」
「そう。今なら俺の奢りだけど」
「食べます!」
沈んでいた凛花は勢いよく顔を上げると、迷うことなくアイスを二本取って俺の前に差し出した。
それはあの日――事故直前まで凛花が食べていたバニラアイスバーだった。
「……一人で二本も食べるの?」
「あ、ごめん! 溝口くんも食べるかなーって……べ、別のアイスの方がいいよね! 私が勝手に決めちゃ……」
「いや、いいよ」
戻そうとする凛花の手からバニラアイスを奪うと、シャーペンの替え芯と一緒にレジへ向かう。
会計を済ませてコンビニから出ると、商店街を抜けた近くのベンチに腰かける。レジ袋からバニラアイスを取り出して、一つを凛花に渡した。替芯は鞄の外ポケットに突っ込む。
「いいの?」
「むしろ一本貰っていい?」
「だから違うって! あれは勝手に……って、バニラアイスでよかったの?」
「うん。昔からこれしか食べてない」
答えながらバニラアイスを袋から取り出すと、一口かじった。シャリっと音がすると、バニラの濃厚な香りとミルクの甘さが口の中に広がる。
凛花は受け取ったアイスと、なぜか俺を交互に見比べる。
「なんか……しっくりくるね」
「しっくり?」
「溝口くんとバニラアイス。定番って感じ」
ふふっと微笑む。俺もまさか、凛花がバニラアイスを選ぶとは思わなかった。確かに幼い頃から良く食べていたけど、基本的に優柔不断だから悩むときは悩む。もしかしたら焦ってたまたま手に取っただけなのかもしれない。
「もしかして、私もこれしか食べてなかった?」
「あー……そうかも。この間はラムネと迷っていたけど、結局バニラにしてたな」
あの日は凛花がバニラ、俺がミックスフルーツを選んでいた。
俺としては、あのミックスフルーツのアイスはハズレだった。凛花からバニラを一口貰わなければ、
そのまま捨てていたかもしれない。やっぱり食べ慣れた味の方が落ち着くのだ。
「じゃあ私たち、同じもの好きだったんだね」
凛花はそう言って、袋から取り出したバニラアイスを美味しそうに頬張った。
「……いや、お前はラムネの方が好きだったよ」
「アイス……?」
「そう。今なら俺の奢りだけど」
「食べます!」
沈んでいた凛花は勢いよく顔を上げると、迷うことなくアイスを二本取って俺の前に差し出した。
それはあの日――事故直前まで凛花が食べていたバニラアイスバーだった。
「……一人で二本も食べるの?」
「あ、ごめん! 溝口くんも食べるかなーって……べ、別のアイスの方がいいよね! 私が勝手に決めちゃ……」
「いや、いいよ」
戻そうとする凛花の手からバニラアイスを奪うと、シャーペンの替え芯と一緒にレジへ向かう。
会計を済ませてコンビニから出ると、商店街を抜けた近くのベンチに腰かける。レジ袋からバニラアイスを取り出して、一つを凛花に渡した。替芯は鞄の外ポケットに突っ込む。
「いいの?」
「むしろ一本貰っていい?」
「だから違うって! あれは勝手に……って、バニラアイスでよかったの?」
「うん。昔からこれしか食べてない」
答えながらバニラアイスを袋から取り出すと、一口かじった。シャリっと音がすると、バニラの濃厚な香りとミルクの甘さが口の中に広がる。
凛花は受け取ったアイスと、なぜか俺を交互に見比べる。
「なんか……しっくりくるね」
「しっくり?」
「溝口くんとバニラアイス。定番って感じ」
ふふっと微笑む。俺もまさか、凛花がバニラアイスを選ぶとは思わなかった。確かに幼い頃から良く食べていたけど、基本的に優柔不断だから悩むときは悩む。もしかしたら焦ってたまたま手に取っただけなのかもしれない。
「もしかして、私もこれしか食べてなかった?」
「あー……そうかも。この間はラムネと迷っていたけど、結局バニラにしてたな」
あの日は凛花がバニラ、俺がミックスフルーツを選んでいた。
俺としては、あのミックスフルーツのアイスはハズレだった。凛花からバニラを一口貰わなければ、
そのまま捨てていたかもしれない。やっぱり食べ慣れた味の方が落ち着くのだ。
「じゃあ私たち、同じもの好きだったんだね」
凛花はそう言って、袋から取り出したバニラアイスを美味しそうに頬張った。
「……いや、お前はラムネの方が好きだったよ」