腑に落ちない顔をするが、自分の落ち度なのだから仕方がない。
 自分の好きなもの、嫌いなもの。家族や休みの日の過ごし方。ほとんど無気力で過ごしているような生活を言葉にしてもあまりパッとしないが、それでも凛花は根気よく耳を傾け続けた。

「がっつりインドア派なんだね。外に遊びに行くことはないの?」
「小学生までだな。中学で挫折した」
「挫折? 何かあったの?」
「別に、夏休み中にアイスが食べたくなって、コンビニまで自転車を漕いで向かっていたら、その途中で転んで骨折しただけ」
「み、見た目に寄らず大胆なことするんだね」

 夏休みの課題がわからなくて家に来た凛花が、じゃんけんで負けた人が買いに行くようにって言い出したのがきっかけだったんだけどな。

 こうやって話してみると、多くの記憶で凛花が過ぎる。押し入れの奥にしまい込んだアルバムを引っ張り出したような懐かしさに口が滑らないように、気を付けながら言葉を選んでいれば、いつの間にか自宅の最寄り駅に着いていた。

 慌てて電車から降りて改札を出る。ここからは大通りから外れた道を歩く。ふと、近くのコンビニが視界に入ると俺は足を止めた。

「……コンビニ寄ってもいい?」

 今日の授業でシャーペンの替え芯が無くなっていたことを思い出す。大通りの商店街に行けば文房具の専門店があるけど、早くに店じまいを始めるから、放課後に寄ろうとすると大体買えず、無駄足になる。今から向かってもシャッターを降ろしている真っ最中だろう。

 凛花から了承を得てコンビニに入ると、ひんやりとした空気が瞬く間に身体にまとわりついた。日差しが強く、夏日並みに暑い日にはありがたいが、ここまでクーラーが効いていると逆に風邪を引いてしまいそうだ。

 目的のシャーペンの替芯を見つけると、アイスコーナーを見ていた凛花に声をかける。
()()、買ってくるけどなにか――あ」

 しまった。