いつも明るくてクラスのムードメーカー的な存在の凛花と、人と話すことが苦手で端の方に隠れている俺。正反対の二人に共通するものはない。

 しいていえば、凛花はいつも唐突だった。
 宿題を見せろとか、クッキーを作ったから味見してくれとか、俺が何をしていようとも気にせず押しかけてくる。最初は渋々付き合っていたが、諦めて受け入れていたものの、高校生になってからはそれがぱたりと無くなった。

 教室が同じだからこそ挨拶はするが、凛花は仲の良い友人たちとお喋り、俺は授業が始まるまで席に座ってスマホゲームや読書、ときどき仮眠。それぞれの時間を過ごしていた。

 それでも家が近く、俺の母親と仲が良いこともあって、遊びに来た時は適度に話していた。学校ではお互いが空気みたいな存在だと認識しているのかもしれない。
 不本意に置かれた距離は、今日に至るまで縮まることはなかったのに、どういう風の吹きまわしだろうか。一緒に帰ることも三年に進級してから初めてだった。

「今更どうした?」
「そう? 私はいつも小太郎と帰りたいなーって思っているよ?」
「うっわ、絶対嘘だろ」
「本当だよ。私、心配なんだから」
「心配?」
「小太郎って友達いる?」
「は?」

 間髪入れずに一言で返す。じろっと睨むと、凛花は少し拗ねた口調で続ける。

「だって学校終わったらすぐ帰るでしょ。生徒会の仕事があるわけでもないから、早く帰りたいのもわかるけど……」
「昼休みは()(やま)とか(もり)()といるじゃん。お前だって見てるだろ」
「でもこの間、放課後に誘われたゲーセン断ってたでしょ?」
「どこまで見てんだよ……。別にいいだろ。お前がそこまで干渉する必要ねーし。大体、今も充分満足して……」
「私は心配だよ。小太郎が友達と一緒に最後のスクールライフを満喫できるか、ちょー心配!」

 人の話も聞かず、凛花は唸りながら空を仰いだ。

「私がいなくなったら、小太郎は大丈夫なのかなって心配になるんだよ」
「何を――」