そう言って席を立って教室の出入り口に向かう。待って、と凛花が鞄を持ってついてくるのを確認して教室を出ると、慌しい様子の佐野と森田に鉢合わせた。

「お、溝口! やっと起きたか!」
「……ああ、うん。寝てたわけじゃないんだけど、そんなことより二人は何してたの?」
「俺も佐山も、進路について先生に呼び出しくらってた」
「そっか」
「今日は古賀も一緒なのか?」

 森田が溝口の後ろから顔を覗かせている凛花を見て問う。

「そう。今日だけ」
「ふーん……そうだ! 俺と森田、これから駅近くのゲーセンに行くんだけど、二人もどう!?」
「え! 行ってみた――」
「ダメ。まだ退院して日が浅いんだから、今日は大人しく帰れ」

 佐山の提案に目を輝かせた凛花を引き留めると、途端にふくれっ面になった。

「ええーっ……溝口くん、厳しいなぁ」
「だってお前、いつも帰りの予定は家族に事前共有してるだろ。急に予定を入れたら不審に思われるぞ。それなら俺は一緒に帰らないからな」
「それは困る! 真っ直ぐ帰ろう!」

 慌てて取り止める凛花に、小さく溜息をついた。
 事故に遭う以前から、彼女の家庭が過保護なのを誰よりも知っている。文化祭の前日準備で帰りが遅くなると凛花が伝え忘れただけで、母親が学校に連絡するだけでなく、溝口家に押しかけてきたこともある。これには凛花本人も呆れていた。

「だからまた時間があった時に行こうよ! その時はお母さんに連絡するから!」
「行くのは決定かよ……」
「でも溝口くん、良く知ってるね。もしかしてお父さんと連絡取り合ってるの?」

 そんなわけあるか。