「この場所に見覚えはない? 君には随分辛い場所だと思うんだけど」
「……わかってるならさっさと言えよ」
「おっかないなぁ。そう、ここは君とある少女が遭遇した不運な場面さ」

 仲介人が俺の顔を覗き込むようにして言う。すると、先程まで動いていなかった歩行者用の信号機が青く点滅し始めた。それと同時に、あの時ぶつかった車と同じものがこちらに向かってやってくる。

「君はどうして、この場所で事故が起きたと思う?」

 横断歩道は見通しが良いだけでなく、車通りも少ない方で事故が起きるような場所ではない。警察の話では無免許運転という名目で終わったが、車にも信号機にも不具合があったとは聞いていない。

 ではなぜ、事故が起きてしまったのか。

「――君の大切な幼なじみが事故にあったのはね、ちゃんと理由があるんだよ」

 仲介人はそう言って横断歩道の中心に立つ。信号機の青いランプは、未だ点滅を繰り返している。

「君にはわかるかな? どうして彼女が事故に遭ったのか」
「……わかってたら、警察なんていらない」
「だよね。でもそっか。君ならわかると思ったんだけどなぁ」
「勿体ぶるなよ、お前は何を知って――」

「あの日、ここで事故に遭うのは彼女じゃなかった」

 俺の言葉を遮って、仲介人は唐突に切り出した。まるで物語を読み聞かせるかのように、ゆっくりと優しい声色でさらに続ける。

「実際に事故に遭う人物は彼女にとって、とても大切な人だった。失いたくないと願ったからこそ、彼女は自ら命を投げたのさ。自己犠牲、っていうのかな。なぜ人は危険を顧みず、身を削ってまで他人のために何かしようとするんだろう? 人間には乾電池を入れるボックスも、電気と接続するコンセントも付いていないのに、何を原動力として動くんだろうね? それが不思議で仕方がない。ああ、君はちなみに何で動くの?」