*
「――突然で大変申し訳ないんだけど、どうか混乱しないでボクの話を聞いてくれるかな」
昼下がりの雲一つない青空に、ギラギラと照りつける太陽が浮いている。一ヵ月前に事故があった横断歩道に立つ俺に対して、見知らぬ少年は問いかけた。
炎天下にも関わらず白いポンチョを羽織り、白いズボンに白い靴といった全身真っ白な服に身をつつんだその人物は、深く被った白いキャスケットの下は切り揃えられた黒髪の合間からニヤリと口元を緩めた。
少年のような、少女のような。色白の肌を持つ不思議な人物は、両手を広げて大きく見せる。
「ここは夢の中だと思ってくれて構わない。実際にはもっと繊細な空間なんだけど、それはまた機会があれば教えてあげる」
「……誰だ?」
「ボク? ボクのことはそうだな……仲介人とでも呼んでほしい。しいていえば、ボクはボクであって何者でもない。君の質問には答えないから、これ以上聞かないでくれると有難いな」
なんてややこしい奴だ。
ベラベラと喋る真っ白な人物――改め、仲介人に眉をひそめた。正体不明の仲介人は夢だと思えと言っていたけど、自分の思考がハッキリしているのもあって、簡単に夢と思い込むのは難しい。更にこの癖のある話し方に何者なのか、どうしてここにいるのかという問いかけには答えてくれなさそうだ。
「夢ならおかしいな。俺、さっきまで起きてたんだけど」
つい先程まで、いつもの教室で放課後前のホームルームを受けていた。今日に限って担任の教師から連絡事項が多く、くたびれてきて軽く目を瞑ったが、閉じたのはたった数秒ほど。次に目を開いたときにはもうこの場所にいた。記憶を切り取られたような、見慣れたワンシーンを貼り付けたこの場所は、あの日と同じように日差しが強く、陽炎が揺れていた。
困惑する俺を余所に、仲介人は話を続けた。
「時間が無いんだ。ボクが現れたのには理由がある。すべては必然。偶然なんてものは理解に苦しむ」
「勝手に人を連れてきて時間がないとは、随分勝手すぎないか?」
仲介人の言葉は遠回りで紛らわしく、余計に話をかき回す。できれば完結に言ってほしいと苛立っていると、仲介人は「わかったよ」と少々つまらなさそうに眉をひそめた。
「――突然で大変申し訳ないんだけど、どうか混乱しないでボクの話を聞いてくれるかな」
昼下がりの雲一つない青空に、ギラギラと照りつける太陽が浮いている。一ヵ月前に事故があった横断歩道に立つ俺に対して、見知らぬ少年は問いかけた。
炎天下にも関わらず白いポンチョを羽織り、白いズボンに白い靴といった全身真っ白な服に身をつつんだその人物は、深く被った白いキャスケットの下は切り揃えられた黒髪の合間からニヤリと口元を緩めた。
少年のような、少女のような。色白の肌を持つ不思議な人物は、両手を広げて大きく見せる。
「ここは夢の中だと思ってくれて構わない。実際にはもっと繊細な空間なんだけど、それはまた機会があれば教えてあげる」
「……誰だ?」
「ボク? ボクのことはそうだな……仲介人とでも呼んでほしい。しいていえば、ボクはボクであって何者でもない。君の質問には答えないから、これ以上聞かないでくれると有難いな」
なんてややこしい奴だ。
ベラベラと喋る真っ白な人物――改め、仲介人に眉をひそめた。正体不明の仲介人は夢だと思えと言っていたけど、自分の思考がハッキリしているのもあって、簡単に夢と思い込むのは難しい。更にこの癖のある話し方に何者なのか、どうしてここにいるのかという問いかけには答えてくれなさそうだ。
「夢ならおかしいな。俺、さっきまで起きてたんだけど」
つい先程まで、いつもの教室で放課後前のホームルームを受けていた。今日に限って担任の教師から連絡事項が多く、くたびれてきて軽く目を瞑ったが、閉じたのはたった数秒ほど。次に目を開いたときにはもうこの場所にいた。記憶を切り取られたような、見慣れたワンシーンを貼り付けたこの場所は、あの日と同じように日差しが強く、陽炎が揺れていた。
困惑する俺を余所に、仲介人は話を続けた。
「時間が無いんだ。ボクが現れたのには理由がある。すべては必然。偶然なんてものは理解に苦しむ」
「勝手に人を連れてきて時間がないとは、随分勝手すぎないか?」
仲介人の言葉は遠回りで紛らわしく、余計に話をかき回す。できれば完結に言ってほしいと苛立っていると、仲介人は「わかったよ」と少々つまらなさそうに眉をひそめた。