事故から一ヵ月経った六月のある日。
いつものように登校すると、なにやら教室が騒がしかった。昇降口で一緒になった森田と首を傾げる。
「朝からうるさいなぁ……何かあったのか?」
「さぁ? ……あ、佐山だ」
教室の入口で立ち尽くしていた佐山がこちらに気付くと、随分慌てた様子で駆け寄ってきた。
「み、みみみ溝口! 来たぞ!」
「きた? なにが?」
「何って、お前バカ! なんで知らねぇんだよ!」
来いと言わんばかりに腕を引っ張られて教室に入ると、目を疑った。
ある一角の席に人混みがある。クラスのほとんどの女子が集まっているその中心には、つい先日まで入院していたはずの古賀凛花の姿があった。
前髪の下に額に白いガーゼが貼られ、痛々しさを物語っていたが、それでも以前と変わらず笑みを浮かべている。クラスメイトに囲まれて、楽しそうに話している彼女は、確かに凛花本人だった。
「古賀さん、もう大丈夫なの?」
「うん! 一週間も休んじゃってごめんね」
「凛花……」
「さっちゃん、この間のクレープ、いつ行こっか?」
さっちゃんと呼ばれた女子生徒――青山さつきは、凛花の顔を見て泣き出してしまう。
確か事故があった日、元々クレープを食べに行く約束をしていたんだっけ。もしも青山の急用がなければ、俺が一緒に帰ることなく、凛花が事故に遭うことも無かったかもしれない。
いつものように登校すると、なにやら教室が騒がしかった。昇降口で一緒になった森田と首を傾げる。
「朝からうるさいなぁ……何かあったのか?」
「さぁ? ……あ、佐山だ」
教室の入口で立ち尽くしていた佐山がこちらに気付くと、随分慌てた様子で駆け寄ってきた。
「み、みみみ溝口! 来たぞ!」
「きた? なにが?」
「何って、お前バカ! なんで知らねぇんだよ!」
来いと言わんばかりに腕を引っ張られて教室に入ると、目を疑った。
ある一角の席に人混みがある。クラスのほとんどの女子が集まっているその中心には、つい先日まで入院していたはずの古賀凛花の姿があった。
前髪の下に額に白いガーゼが貼られ、痛々しさを物語っていたが、それでも以前と変わらず笑みを浮かべている。クラスメイトに囲まれて、楽しそうに話している彼女は、確かに凛花本人だった。
「古賀さん、もう大丈夫なの?」
「うん! 一週間も休んじゃってごめんね」
「凛花……」
「さっちゃん、この間のクレープ、いつ行こっか?」
さっちゃんと呼ばれた女子生徒――青山さつきは、凛花の顔を見て泣き出してしまう。
確か事故があった日、元々クレープを食べに行く約束をしていたんだっけ。もしも青山の急用がなければ、俺が一緒に帰ることなく、凛花が事故に遭うことも無かったかもしれない。