画角に入らないように、撮影している場所から意図的に遠ざかった。クラスメイトの視線が恐ろしいなどという、どうでもいい理由のためではない。この動画をおばさんが観た時に、自分が映っているを見ただけで怒り狂うと思ったからだ。

 何より、凛花本人が俺を見て、車と衝突する場面の記憶を思い出す可能性も捨てきれない。

 検査を終えた数日後に、おじさんから結果を両親を通じて教えてもらった。

 医師の話だと、事故の直前――丁度、凛花が学校を出たあたりまでの記憶は残っている。しかし、自分が事故遭ったことは覚えていないようで、その時のショックで記憶を失ったと診断された。更に不思議なことに、幼い頃からの付き合いがある小太郎のことは一切覚えていなかったことから、俺が無暗に関わると、事故当時の記憶を引き起こすキーパーソンになる可能性が高いと言われたという。

 また、警察からも連絡があり、車に取り付けられたドライブレコーダーに、車が路側帯を越えて運転していたところに凛花と衝突した場面が記録されていた。

 もちろん、俺が近くにいたこともハッキリと映っていたが、突き飛ばす動作は一切映っていない。それを確認したうえで調べていくと、車を運転していた人物が当日、無免許で運転していたことが発覚した。ここからは警察が取り調べを進めていくらしい。それ以上の話は入ってこなかった。

 一応、俺は無実であることは証明されたが、彼女が記憶を無くしているのは恐怖心から来るものだ。

 自分はいない方がいい。忘れているなら、忘れたままの方がいい。

 それが彼女のためになると思って、関わることを止めることにした。たとえ学校に復学しても挨拶程度に留めるつもりだ。