解離性健忘症という、特定の人のことを忘れてしまう症状があるらしい。

 そうでなくても、記憶喪失なんて人が作った物語にしか出てこないものだと、他人事のように思っていた。決して「絶対に有り得ない!」と断言していたわけではなく、実際に目の前でそれが起きたことを、誰しもすぐには受け止めきれない。

 信じられず、未だ受け入れられない。どうしても過去に縋ってしまうのだ。

『――だれ?』

 幼なじみはもういない。あの日から俺達は、被害者と目撃者になった。