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「……二人とも自分勝手すぎるよ。雑だし」

 公園を出てゆっくりと遠回りをしながら帰る中、一通り説明し終えたところで、凛花が拗ねた顔をして言う。目元が真っ赤に腫れているのは、今日一日泣きっぱなしだったからだろう。

「そりゃ、それしか方法がないって言われたらしょうがないかもしれないけど、私は納得できない。結局小太郎が事故に遭うことになるんだから、私がしたこと全部意味がなかったじゃない」
「予知夢を一生見えないようにするには、最後の予知夢を起こさないといけない。……仲介人が一生凛花にくっついて、悪夢を食べ続けるよりかはマシだろ」
「それはそうだけど……」

 腑に落ちないと口をとがらせる。こればかりはどうしようもできない。時間を戻せる人間がいるなら名乗り出てほしい。

「それに、凛花がしたことがすべて無駄になった訳じゃない」
「え……?」

 そもそも凛花が俺を助けてくれていなければ、凛花はずっと予知夢に悩んだままだったし、俺は死んでいたかもしれない。仲介人が俺達の前に現れなかったら、そもそも最初から成立しなかったのだ。

 仲介人が偶然凛花の予知夢に惹かれて辿り着いたのかもしれないが、それは神のみぞ知る話。俺たちは知ることはないだろう。

「ところで、小太郎は何と取引したの? 仲介人が私たちを繋いだ大切なモノって言ってたけどアイスでしょ。でもそれをどうするとは聞いてないんだよね」
「……アイツ、本当に口が軽いな」

 別に凛花に言わなくても良いようなことを言いやがって。
 腹立たしい反面、隣でじっと見てくる凛花に圧されて溜息をつく。すると何か気付いたのか、凛花はおそるおそる訊いてきた。

「もしかして、バニラアイスがこの世から消えちゃうの?」
「……いや、それはない。俺だけに関係ないだろ。アイスなんて世界各国にあるんだから」
「小太郎だけ……え、ちょっと待って。それじゃあ」

 突然ハッと目を丸くしてこちらを見てくる。大体わかっただろう。

「……そうだよ。今後、死ぬまでバニラアイスを食べられなくなる。それが取引の条件だ」