仲介人はポンチョを掴んでいる俺の手を外すと、整えながら続けた。

「彼女の取引を解消しないと、君の望みは叶えられない。だからまず彼女の記憶を戻してあげないといけないんだけど……君の記憶はもちろん、事故の恐怖も思い出してしまう。君はそれを避けるために行動してきたはずなのに、これでいいわけ?」
「……ああ。それでいい。その代わり、凛花を事故現場に近づけさせないでくれ」
「というと?」
「お前が俺をここに連れてくる前、俺は凛花と事故現場が近い自然公園にいた。せめて補習中の、教室に移動させてほしい」
「……なるほど、お友達に擦り付けるってことかい」
「いちいち嫌な言い方するよな、お前」

 癪に障るが仕方がない。

 学校に行けば青山がいる。予知夢のことを真摯に取り合ってくれた彼女なら、凛花の安定剤になると思ったのだ。それに同じ補習には佐山もいたはずだ。ひょっとしたら森田や牧野も引っ張ってくるかもしれない。ならば、彼女のことは青山たちに任せることが一番だ。

 一番の鬼門は、凛花が見た俺が事故に遭う予知夢を実現させることだった。

 誰かが身代わりになったとしても、「俺が事故に遭う」という予知夢は覆ることはない。仲介人いわく、こればかりは運命が確定しているのだという。明日か、数年先か。はたまた元の世界に戻ってすぐに起こる可能性も否定できない。少なくとも、凛花から予知夢を奪うための最低条件だった。