私の言葉に、お母さんの目は涙を浮かべていた。こんなことを娘から言われるとは思っていなかったのだろう。私だって言いたくなかった。
「小太郎は悪くない。全部打ち明けられなかった、私が悪いの」
「凛花……」
「……ごめん、部屋にいるね」
呆然と立ち尽くしたままのお母さんに告げて、私は自分の部屋に行く。
部屋のドアを閉めたところで、家の外で車が停まる音がした。お父さんが帰ってきたようだ。お母さんのことはお父さんに任せよう。一言連絡しようとスマートフォンを開くけど、何も浮かばなくて止めた。
私はドアに背中を預け、そのまま滑らせて床に座り込んだ。ずっと抱きしめていた小太郎の鞄に顔をうずめる。
電話越しの彼の声が未だに頭から離れない。好きなアイスの話は小太郎らしいと思ったけど、あの状況で話すことじゃない。まるで最後の別れみたいに言い残した言葉にしか聞こえなかった。
「……私だって、ラムネが好きだもん」
小太郎が食べてたから、バニラを好きになったんだから。
「――やっぱり君たちは似たもの同士だね」
ふと、頭の上から声が聞こえた。顔を上げるとそこには、真っ白な服装の仲介人がベッドに座っていた。相変わらず顔はキャスケットのつばで隠れてよく見えない。