今までお母さんの言う通りにしてきた。学校で友達と話が合わなかったことや、私の行きたい高校をそっちのけで自分が在学していた女子高を受けろと言ってきたことも、言われたままやってきたけど結局は自分で決めたこと。たとえそれでお母さんに失望されても仕方がないと思っていた。

 でも小太郎のことを悪く言うのは違う。

 自分の子供じゃないのに、嫌なところを見つけては隠れて批判するのは他人がすることじゃない。何かあるたびに「自分の娘の方が~」と自慢げにしているのは、聞いてて恥ずかしかった。

 今まで何も言わなかったのは、事故の後に精神的に不安定になったお母さんに寄り添うべきだと思っていたから。たとえ理不尽を言われても、原因は私だからと飲み込んだ。

 でももう、これ以上は限界だ。

「お母さんは、私を信じてくれないの?」
「え……?」

 随分気の抜けた声だった。お母さんが困惑した顔をして見てくる。

「小太郎は私を守ってくれたの。それを私が突き放した」
「……何を、言っているの? 凛花、やっぱり何か吹き込まれたんでしょう? お母さんに嘘つかなくていいのよ?」
「嘘なんてついてなんかない!」

 お母さんに悩みを打ち明けなくてよかったと、素直にそう思った。ずっと悩んでいた予知夢も、きっと周りのせいにして取り合ってくれなかったかもしれない。

「お母さんにはすごく感謝してる。でもね、いつも居てほしいときに寄り添って支えてくれたのは小太郎や学校の友達だったよ。私はお母さんに、小太郎や大切な友達をバカにしてほしくない」