話の意図が分からない。好きなアイスなんて人それぞれだけど、小太郎がバニラ以外を選んだところは見たことがなかった。
「待って、全然わかんな――」
『さよなら、凛花』
乱暴に通話を切られ、通話終了の画面が強制的に映し出される。森田くんがスマートフォンを奪い取って同じ電話番号にかけ直すけど、すでに存在しないものとして繋がることはなかった。
落胆したその次の瞬間、目の前の先にある歩行者用の信号機に一台の車が突っ込んだ。衝突した衝撃が辺り一帯に響く。近くを歩いていた通行人が叫び、警察と救急車を呼ぶ声が、少し離れた場所にいる私たちにも聞こえた。
慌てて佐山くんと森田くんが様子を見に駆け出した。
私はその場に座り込んだまま、夢で見た光景と重ね合わせてしまう。
怪我人は? 原因は?
衝突して曲がってしまった横断歩道が赤から青へと移り変わる。ブレーキランプがチカチカと点滅しているのに目を細めると、千佳が私の両目をそっと隠した。真っ暗で何も見えない。
「……溝口くんは、きっと大丈夫だよ」
これが全部悪い夢であればいい。そう願いながら私は目を閉じた。