「あ、れ……?」
そのまま糸が切れたように、コンクリートの上に座り込んだ。立ち上がれない。まるで金縛りにあったような感覚だった。日中に温まったコンクリートの熱が、じりじりと足に伝わってくる。急に止まったことで心拍数が上がり、耳元でドクドクと異常な速さの心音が聞こえた。それに加え、手が小刻みに震え始めた。
あと少しであの場所に行けるのに、と唇を噛んで気付いた。
ここは小太郎の代わりに私が車道に飛び込んだ場所。途端、頭の中で車のブレーキ音が響く。蘇った記憶は、私の意志を聞き入れることなく再生した。
「……い、や」
私は今、ここで味わった恐怖に押しつぶされている。
「動いて、お願い……」
この先に行かなくちゃいけない。たとえ怖くても、あの場所に小太郎がいるかもしれない。また同じ事故が起きるかもしれない。しかし、それとは裏腹に、足は地面に張りついて動かなかった。
「やーっと追いついた!」
「凛花ぁ、早すぎ……って、大丈夫!?」
後ろからさっちゃん達が息を切らしながらやってくる。公園から追いかけてきてくれたらしい。座り込んだ私を見て、千佳が寄り添ってくれた。そしてもう目の前に見えた信号機を見て察する。
「ここって凛花ちゃんが事故に遭った場所……もしかしてこの近くに?」
「……分からない、でも」
夢で見た場所だから、と言いかけて口を噤む。離れてはいるものの、目視した限りでは小太郎らしき人物は見当たらないし、事故が起きている様子もない。私の勘違いならそれでいい。
それでいいのに、どうしても嫌な予感が拭えない。むしろ胸騒ぎがした。
「――大丈夫!」
バシン! と背中を軽く叩かれる。見れば、佐山くんが自信満々な笑みを浮かべて言った。
「消えるなって約束した奴が、そう簡単に古賀ちゃんの前から簡単にいなくなったりしねぇよ!」
「え……?」
「言われてたじゃん。夏休み前に、学校の階段で」
「……あ」