すると、遊具で遊んでいた親子に話を聞いていた森田くんと千佳が戻ってきた。

「あの親子が公園に来たのは一時間前くらいだったんだけど、うちの高校の制服を来た男の子が出ていくのを見たって! 手ぶらだったのが気になってたみたい」
「手ぶらって……どっちに曲がったとか分からないの?」
「そこまではちょっと……。でも足取りは重そうだったって言ってた。写真は見せたけど、後ろ姿しか見えなかったみたい」
「確実に溝口かわかんねぇじゃん。何か特徴……金髪だったら一発なのに!」
「そんなことしてみろ、夏休み中でも学校行けば即説教だ」

 口をとがらせて拗ねる佐山くんに、森田くんがいたって冷静に突っ込む。
 一時間くらい前まで小太郎らしき人物がここにいたとして、どうして鞄だけが残されているのかは皆目見当もつかない。ドラマみたいに誘拐事件に巻き込まれていたとしたら、あたかも「見つけてください」といわんばかりにベンチの上に置いてあるのは不自然だ。

「ここを中心に近辺を探すか。古賀、この近くに溝口が行きそうな場所があるかわかるか?」
「えっと……この近く……」

 スマートフォンの地図アプリを起動してこの近辺を画面上から探すも、思い当たる場所は一つもない。地図を拡大しながら細かいところまで見ていくと、今いる自然公園から数キロ離れた場所にある交差点が目に留まる。見通しが良く、比較的車通りも少なくて横断歩道があるこの場所は、私が事故にあった場所だった。

 私たちが通う学校から駅までの道のりだと遠回りになるのと、事故当時の記憶を思い出させないために、今まで別の道を使ってきた。だから私にはこの近辺を使ったことはほとんどない。

 でも小太郎は?