図書室や資料室、体育館裏や部活棟までくまなく探し、近くにいた生徒や先生に小太郎を見かけていないか、片っ端から聞いてまわった。しかし、誰も小太郎の姿は見ておらず、どの教室にも小太郎がいた形跡はどこにもない。
片手間に何度も電話をかけているが、呼びかけるコールが鳴り続くだけで一向に出る気配はない。それどころか留守番にも繋がらず、延々とコールが続くだけ。電源が切れていないことだけが救いだった。いつも必要な時しか手元に置かないようにしていたから、鞄の中にあって気付いていない可能性はあるけど、すでに何件もかけ直していることに気付かないはずがない。
すると、さっちゃんのスマートフォンに佐山くんから電話がかかってきた。相槌しか聞こえなかったけど、顔をしかめたのを見てなんとなく察する。電話を切ると、自分と佐山くんの鞄を持って私に教えてくれた。
「佐山が公園で溝口の鞄を見つけたって。私たちも行くよ」