「……古賀ちゃん、教えて」
佐山くんに呼ばれて顔を上げると、いつになく真剣な顔つきで訊いてくる。
「溝口、ピンチなの?」
「……わからない、補習に小太郎が来てないのって……」
「朝、下駄箱で溝口と凛花のことについて話したわ。何か思いついたような様子だったけど、頑なに教えてくれなくて。考えたいことがあるから先に教室に行けって言われて……その後はわからない」
「私のこと……?」
「……悩んでた、こと」
さっちゃんが視線を逸らして申し訳なさそうに言う。それが予知夢のことだとすぐにわかった。
「ごめん、凛花。誰にも言わないって約束したのに……」
「……ううん。いつかは話さないといけないって思ってた。だからさっちゃんは悪くない。何も悪くないよ」
さっちゃんの目にもうっすらと涙が浮かんでいた。それほどまでに黙っていることが辛かったはずだ。予知夢なんて信じられるはずがないものに、二年も寄り添ってくれていたのだから。
きっと小太郎は何かに気付いて学校を出て行ったに違いない。
だとしたらどこに?
「溝口、まだこの近辺にいるかもしれないじゃん。俺、ちょっと探してくる!」
「ちょっと、佐山! 溝口が学校を出たのは昼前よ? もう三時間も経ってるのに、近辺にいるかどうかも怪しいわ!」
「だからだよ! 学校にいる可能性もあるから、青山は校内を探してくれ。古賀ちゃんはここで溝口に電話し続けて」
「アンタ一人で外を探す気?」
「森田にも連絡した! 塾終わったら駅前のゲーセン集合にしてたから、こっちに向かいながら探してくるってよ!」
鞄をほったらかしにしたまま、淡々と指示を出して佐山くんは教室を飛び出した。心当たりの場所があるようにはみえない。きっと手あたり次第探すつもりだ。さっちゃんも同感だったのか、大きな溜息をつく。
「森田がいないと佐山の暴走は止まらないわね……。とりあえず私は校内を探して――」
「待って、私も行く」
「でも……」
「電話なら探しながらでもかけられるから、お願い!」
涙で濡れた目を手の甲で拭う。二人に任せたまま、自分だけ何もしないなんて絶対嫌だ。私が頑固なのはさっちゃんも充分わかっているはず。渋い顔をしながらも頷いてくれたのを見て、私たちも教室を出た。